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【小説】もし日本の総理大臣がPOP広告を描いたら〔第2章〕10
〔第2章〕 高大は日本のPOPに取り組んだ。
第7節―1)
【あらすじ】 高大は内閣改造を終え、〝日本の景氣回復〟への次のステップに進もうとしていた!
1日の仕事を終え公邸に戻った。
高大は移動時間やその他時間のあるとき、また寝る前に〝POP最強のルール〟に目を通していた。一通り読み終え、再び読み始めていたくらいだ。今度は大切なページに付箋を付けながらであった。
高大は〝日本の景氣回復〟への次のステップに進もうとしていたのだ。
今日は寝る前に自分の机の引き出しから3本のマーカーを取りだした。最近、自費で購入したものだ。本に書いてあったマーカーと用紙を用意していたのだ。
本のPOP文字をどうしても描きたかったのだ。記されているサンプルのとおりに、カタカナ、ひらがな、漢字などを描いてみた。とても上手とは言えない出来栄えであった。
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芯の先端が丸くカットされているのが丸型マーカー(通称:丸ペン)です。持ち方は鉛筆と同じです。ただし、芯の先端を使うため、多少意識してマーカーを立てて使います。~ ~芯の先端が斜めにカットされているのが角型マーカー(通称:角ペン)です。描く線によって持ち方を変えます。~ ~芯の先端が角ペンより幅広いのが極太マーカーです。角ペン同様、縦線と横線で持ち方を変えます。(p92)
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本に書いてある通りに繰り返し練習を重ねていった。
高大には次回の閣僚懇談会までにやらなければならないことがあったため、寝る間を惜しんで描き続けていた。
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「書く」ではなく「描く」です。「書く=文字」「描く=図形」です。~ ~まず制作する人が「描く」という意識をもつことです。(p94)
POP文字を描くときのポイントは、線を引いたら止めることです。線の終わりははねたり、払ったりせずに、必ずしっかり止めます。短期間でPOP文字の描き方を習得したいときは、特にこの基本を忠実に守りましょう。(p95)
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サンプルを真似しながら数日、練習を続けマーカーに使い方にも慣れたため、最初よりは明らかに文字ではなく図形になっていた。
――― マーカーには独特な持ち方や使い方があるのか…
高大はこれまで、鉛筆や筆の持ち方や使い方は学校で教わったことがあったが、マーカーは初めてであった。
――― これは楽しい!鉛筆や筆同様に学校で教えたら良いのではないか…
高大はこのとき、文部科学大臣に抜擢した野党の眞鍋の顔がよぎっていた。
POP文字が描けるようになったことで、高大はPOP制作に取り組もうとしていた。しかし、本に記してある次のところが氣になっていた。
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図形化したPOP文字が上手なことと、POPにアピール力があることはイコールではありません。POP文字は1つのかたまりとして表現してこそ訴求力がアップします。(p100)
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そして、このページには訴求力を高める〝3つの法則〟が記されていた。
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〔法則1〕
POP文字は天地、つまり高さをそろえることが基本です。
〔法則2〕
ひとつひとつのPOP文字の幅をそろえることもポイントです。
〔法則3〕
字間を詰め、かたまりで見せることが決め手となります。
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高大は、〝3つの法則〟を意識しながらPOP文字で文章を描いてみた。高さをそろえることはそんなに難しくなかったが、幅をそろえることと時間を詰めて描くことが意外に単純ではなかった。
しかし徐々にではあったが、本に記されてあるとおりに描けるようになってきた。
閣僚懇談会の日が近づいていたので1枚の用紙にPOPを完成させるため、これまで練習したように取り組んでみたのだ。
1枚2枚…5枚…10枚と描いてみたが、何かしっくりこないPOPであった。
――― 何か違う…
高大は本に記されているとおり忠実に描いてみたのだが、納得できるPOPがなかなか描けなかった。
悩んだときにはこの本!というのが高大の習慣になり始めていた。すべてのページを熟読していたがつくり方(描き方)の章である第3章を読みなおした。
そこにはやはり重要なことが記されてあった。
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POPを制作するとき、あれこれ考える前に必要なのは余白の設定です。~ ~余白がPOPの命と理解しましょう。紙のサイズや文字が大きいと目立つだろうと思いがちですが、それは大きな誤解です。絵画が引き立って見えるのは額縁に入っているからです。POPも額縁に入れれば引き立つのですが、コストや手間がかかります。簡単に引き立たせる方法が余白の設定なのです。(p88)
余白と文字のバランスによって、商品への注目度が変わり、商品のイメージにも影響します。原則として、周囲の余白が大きいほど高級感を演出できます。逆に、余白がわずかしかない、あるいはまったくない場合、お客さまは商品価値そのものを低く捉えてしまいます。余白の設定を見直すだけで、店にリニューアル効果が生まれるのです。今あるPOPの余白を見直してみてはいかがでしょうか。(p89)
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描くことだけに夢中になっていた高大は、POPの命である余白のことを見落としていたのだ。見落としていたというより、正直なめていた。しっかり描くことができれば魅力的なアピール力がたかまるだろうと考えていたからだ。しかし、うまくいかなかった。
高大は余白を意識してPOPを描いてみた。すると明らかにアピール力に違いがあらわれたのだ。まるで、描いていない部分である余白が語っているように感じていた。
「よしっ、できたぁー!」
余白を意識してあっという間のことであった。
【予告】 第3章へ突入!「高大は日本のキャッチコピーに取り組んだ」