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【小説】もし日本の総理大臣がPOP広告を描いたら〔第3章〕2
〔第3章〕へ突入! 「高大は日本のキャッチコピーに取り組んだ」
第1節―2)
【あらすじ】 各省庁のキャッチコピーの見直しを指示した高大であった!
高大はキャッチコピー作成のアドバイスを本を示しながら行った。
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第2章 キャッチコピーの5つの法則(p58~61)
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「キャッチコピーは奥が深いことがわかります。コピーライターはその人のセンスで素晴らしいコピーが生まれるのかと思っていましたが、しっかりとした理論や法則、方程式があることを知りました。
われわれは素人です。センスの良さは求めていません。各省に関心を抱かせるような分かりやすさと伝わりやすさを重視します。
例えば、今の厚生労働省のキャッチコピーですが、〝雇用、生活、未来のために〟は、分かりやすさはあります。しかし、伝わらない…。これをわずか改善するだけで伝わりやすさを高めることができるのが理論や法則です。
5つの法則を活用するとこのように生まれ変わります」
と言って次のように披露した。
◎その1 … 繰り返し言葉の法則
例)雇用、生活、ワクワクする未来のために
◎その2 … クエスチョンマークの法則
例)雇用、生活、未来を一緒につくりませんか?
◎その3 … 数字の法則
例)雇用、生活、22世紀の未来のために
◎その4 … WHO(誰)の法則
例)次世代のひと、くらし、みらいのために
◎その5 … レコメン(推薦、推奨)の法則
例)世界の人が憧れる!ひと、くらし、みらいのために
閣僚らの反応はやはりいろいろであった。ポジティブに向き合っていたものはさらに関心を示し、眉間にしわを寄せていたものはよりしわを寄せ、そしてまったく意に介さずという態度のものは目をつぶりながらもうなずいていた。
高大は好感触を得ていた。あと8割方の閣僚らを巻き込むことができると。
するとひとりの閣僚が口を開いた。
「閣僚の皆さんは、自分の省のキャッチコピーをご存じでしたか?」
野党ではあるが、経済産業大臣就任の末広明菜であった。
「すみません…。正直私は、各省にキャッチコピーがあったことを知りませんでした」
続けてこのように発言した。すると、
「私もです。就任して間もなかったので確認していませんでした。総理、すみませんでした…」
野党の文部科学大臣の眞鍋忠司が言った。
「いいえ、誤ることはありません。たぶん他の皆さんも同じでしょう(笑)。いかがですか?防衛大臣」高大は笑顔で尋ねた。
「あることは知っていますが、今思い出せと言われると…」
「どうですか?外務大臣」
「………」
目とつぶってうなずいていたが、目を開けざるを得なかった。そして黙って頭を下げた。
そこで厚生労働大臣の兼行が発言した。
「POP広告には技能審査試験があるのです」
以前、厚生労働省の認定で昭和62年から実施していた資格であること(本書第2章p○○参照)を伝えた。
あわせてすでに5万人を超える資格取得者がいることを話すと、閣僚らは一同に驚いていた。
「試験内容は学科と実技に分かれています。学科は店舗、サービス機関等のおける販売促進知識ならびに、販売促進ツール、コミュニケーションツールとしてのPOP広告制作に必要と思われる知識が出題されます。実技はマーカー等を使い、単なるレタリング技術だけではなく、幅広いPOP広告を制作しその能力を審査するものです。色彩やレイアウトなど視覚表現力、キャッチコピーも自ら考えたり、内容を知れば知るほどPOP広告クリエイターは多義にわたる能力を必要としています」
「そんな資格があるんだね…うんうん」と、閣僚のひとりが感心するように言った。
兼行を含めた3人が必ず推進力になってくれると、このとき高大は確信した。
「キャッチコピーが明確でなければ、各省の職員が次世代の子供たちに対してあるべき行政を推進していくための支柱がわからず、国民もパートナーとしてこの国の未来を考えたとき、どうあるべきか迷走してしまうことになります。一丸となって加速していくにはとても大切なことなのです。ですからキャッチコピーはベクトルを合わせて実現するためにも重要なのです」
高大は思いを込めて力説した。
「山川政権のキャッチコピーをまず創りましょうよ!」官房長官の天田が発言した。
天田はタブレット端末を手元に置き何か調べていた。
「第1次山川政権のときにはそれらしいものはなかったようですね。総理」天田が続けて言った。
「そう言われてみるとなかったですね…うんうん」と、また閣僚のひとりが言った。
「いいえ、実はありました。政権を奪取した後だったので〝安定した国づくりはお任せください〟というキャッチコピーがね」
「………」ほとんどの閣僚が無言であった。
「そうそうあったあった。うんうん」閣僚のひとりだけが言った。
「誰が考えたのでしょうね」天田が尋ねた。
「党の広報部です。こう考えると一方的な押し付け感が否めない。こんなキャッチコピーでは国民の支援など受けられなくて当然、一丸となれなくて当然です」
「たしかにキャッチコピーは重要かもしれない」天田が言った。
「大臣就任の際にお伝えした、POP広告を重視していくことをざれごとだと思われた閣僚もいるかもしれません。私は本氣です!
そこで来週のこの時までに自分の省のキャッチコピーを調べてきて頂きたい。そこからがスタートです」
そして一拍おいて言った。
「第2次山川政権と言うより、日本のキャッチコピーとして考えました」
すると、水戸黄門が印籠を出すがごとく、高大は懐に隠し持っていた自作の手描きPOPを閣僚らに公開した。
そこにはこう描かれていた。
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国民の皆さんは誰を感動させたいですか?
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これまでにない、あの国会で国民に問いかけたメッセージと同じキャッチコピーであった。
その2〝クエスチョンマークの法則〟で表現されていた。
【予告】 閣僚懇談会後、高大が制作したPOPで盛会のうちに終了した。その後、野党から文部科学大臣に抜擢した眞鍋と懇親を持つことになっていた。