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【小説】もし日本の総理大臣がPOP広告を描いたら〔第3章〕5
〔第3章〕へ突入! 「高大は日本のキャッチコピーに取り組んだ」
第3節―2)
【あらすじ】 末広経済産業大臣、そして高大のことを避けている渡外務大臣との懇談が続いていた。
高大自ら入れたお茶を飲みながら明日のフランスとの首脳会談について意思の疎通を図っていた。〝フランスのブランドを越える日本〟を構築し、貿易黒字を見据えた交渉を進めることを確認した。
重大なポイントを明確にし、望む結束力が固まっていた。
このタイミングで高大が熱く語りだした。
「この国を繁盛させたい!景氣回復させたい!それには今の国の仕組みでは未来が拓けないのです。そう思いませんか?残念ながら私にはこの国を成長させる力はありません。また政府もそうです。園場議員のほうが政治家としての力、権力を行使できることは間違いないでしょう。
しかし、そのような政治は変えなくてはいけない。権力のあるものがすでに力のあるものたちのための政治を繰り返すだけです。これまでの仕組みを壊さないかぎりますます国力の低下は必至です」
「あなたは園場議員のおかげで総理大臣になったのではないですか。その恩を忘れるようなものと心を通わすことはできない!」
予想どおりの反応であった。そのうえ渡は間違いなく今か、次期総理になっていた人物であったのだ。今の立場に不満を抱いて当然であった。
しかし、渡を説得する自信が高大にはあった。それは例の本に次のように記されてあったからだ。
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店の経営方針に掲げて本気で取り組むのです。上層部が率先してPOP制作のリーダーシップをとってください。制作にかかわれないなら制作者をできるだけほめましょう。そうすれば、まわりのスタッフもどんどんやる気を出してくれます。他人任せでは決してうまくいきません。~ ~「本気」は、リーダー次第で、今すぐにでも変えられること!まずは、リーダーが積極的にPOP制作に参加し、本気をみせましょう。(p199)
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この部分を参考に高大は本氣で渡とぶつかったのだ。
「渡大臣はなぜ国会議員になったのですか?権力を持ちたいからですか。はじめはきっと違ったのではないでしょうか。いや今もそのはずです。なぜ?」
高大が本氣で必死に問いかけると渡はすぐに答えようとはせず時間をおいて言った。
「私にも〝志〟があった…。日本を良くしたい!という〝志〟で政治家を目指した。永田町にいるとそれがいつの間にかなくなっている」
「それはなぜだと思いますか?」
「………?」
「仕組みが悪いのです。渡大臣や各議員が悪いのではなく、仕組みが悪いのです。これを変えなければただ繰り返すだけです。渡大臣のように〝志〟をもった次世代の政治家も、今の仕組みではいつの間にか〝権力〟を優先してしまうのです。〝権力〟ほどあてにならないものはありません。そのあてにならない〝権力〟でこの国は動かされている。このような仕組みの国に未来なんかありません。そう思いませんか?渡大臣!」
「………」
「もう一度、初心を思い出してください!そして私に、いやこの国に本当の意味での力を貸してください」
「私にはあなたについていく理由が見つからない。それと言った実績もなく何を信用し同調すればよいのかがわからない」
「確かに実績やこれといった魅力のある人間ではありません。しかし、私がこれまでの総理大臣に勝るところがただひとつあります。それは〝権力〟がないということです(笑)」
「(笑)」
ずーっと硬かった渡の表情がくずれた。
すると、側で聞いていた末広も同調するように話し始めた。
「〝権力〟はないかもしれませんが、その代わりに〝勇氣〟があります。この野党である私を大臣に指名してくれたことなど、すごい〝勇氣〟だと思います。これまでの常識にとらわれない新しい政治が総理ならできると感じます。われわれは基本として野党ですが、今の仕組みの中で対立していました。仕組みを変えるなんていう発想ではなかった。なぜなら、総理が実行しようとしていることは今の政治家を否定するようないわば自分の身を否定することを進めていらっしゃるからです。今はっきりと私は見つけました。山川総理についていく理由を(笑)」
「………」渡は黙って聞いていた。
「末広大臣!ありがとう」
末広大臣をこの場に呼んでいたことは正解であった。
「園場議員が山川総理を推薦したことは、きっと改革のはじまりだったのです。園場議員は〝権力〟を振りかざしたつもりで推薦したのでしょうが、それを超える本当の意味での力が園場議員に潜在的に働いたのだと感じます。総理になったのは必然なのです」続けて末広が言った。
「〝権力〟を超える力ですかぁ…。本当の意味での!
私は野党の末広議員とも心を通わせることはできないと感じてましたが、立場の違いがあっても日本人ならみんなこの国のことを思う氣持ちは同じなのですね」
渡は心を通わせるように言った。
「明日はワクワクするような首脳会談にしましょう!」そしてこう言い残して渡は自分の部屋へ帰っていった。
翌日の首脳会談をむかえた朝、日本ではある現象が起こっていた。
【予告】 第4章へ 「高大は自らPOP広告クリエイターになろうとした」