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【小説】もし日本の総理大臣がPOP広告を描いたら〔第4章〕7
〔第4章〕 「高大は自らPOP広告クリエイターになろうとした」
第3節―2)
【あらすじ】 学科試験よりも、実技試験が難関であった。
高大にとって立ちはだかる壁は実技試験であった。制限時間160分(2時間40分)、7題の制作が必須であった。実技も60点以上を必要とし、学科・実技それぞれ60点以上で合格であった。
実技試験とは〝手書きによるPOP広告作成〟が要件であった。それにはまず、使用する道具、特にマーカーの使い方を知らなければならなかったが、以前、閣僚懇談会の前に閣僚らに披露するために練習した経験があったため、高大は少し自信があった。
しかし、それはすぐに打ちのめされた。
問題1の(1)は次のような設問であった。
◎黒のフエルトペン(マーカー)を使用し、枠の上の文字を枠内に角ゴシック風の書体で書きなさい。
そこには漢字が8字、数字が5字、出題されていた。漢字はそれぞれ1字につき縦6cm×横6cm、数字はそれぞれ1字につき縦5cm×横5cmの枠が設定され、そこからはみ出さないように主に角ペン(約5mm幅)で作成するのだ。
(注:角ゴシック風の書体にできれば丸ペン使用も可)
問題1の(2)は次のような設問であった。
◎黒のフエルトペン(マーカー)を使用し、枠の上の文字を枠内に角ゴシック風の書体で書きなさい。
今度はカタカナが10字、ひらがなが5字、アルファベットが5字であった。3種類とも縦5cm×横5cmの枠が設定され、同じように主に角ペンで作成するのだ。
高大は必死になって角ペンの練習を繰り返した。通信教育のワークブックには縦線、横線、斜線、曲線、円を書き方が明記されていた。それを参考にワークブックに書き込む枠がなくなるくらいひたすら書き続けた。自由に描くのとは違い、与えられた枠内におさめる難しさを感じていた。
問題2は次のような設問であった。
◎黒のフエルトペン(マーカー)を使用し、枠の上の文字を枠内に丸ゴシック風の書体で書きなさい。
丸ペンを使用する問題であった。10~16文字程度の文章が2章あり、1章は縦2cm×横2cm、もう1章は縦1.5cm×横1.5cmの枠が文字の数だけ設定されていた。
この問題は丸ペンの使い方と設定されている枠の大きさに応じたマーカーの選別を間違わなければ簡単に乗り越えられるレベルであった。これには時間を最小限に抑え、他の問題の練習に充てることにした。
問題3は次のような設問であった。
◎フエルトペン(マーカー)を使用し、下記①~④の語句から2点を選び、それぞれ異なる種類の装飾風文字で枠内に書きなさい。2点ともすべて黒一色のみ使用すること。
指定された色に注意しながら、丸ペン、角ペンを自由に使用できる問題であった。横長熟語を縦5cm×横25cmの枠に作成するのだ。
ここから本来のPOP広告らしい創作性あふれる問題であった。例の本に記されてある次のポイントを参考にした。
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タイトル文字を目立たせる3つのテクニック
POPのタイトル文字をより目立たせ、お客さまの注目度を高める3つの方法があります。影付き文字、ふちどり文字、袋文字の基本的な描き方を練習してみましょう(p104)
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自分のセンスの無さに最初はあきれるほどであったが、コツさえ掴めばそれは自信へと変化していた。自らいろいろな装飾文字を発想するまでセンス?いやモチベーションが高まっていた。正直、問題1(1)・(2)・問題2は好きではなかった。なぜなら、型にはめられる感覚があったからだ。高大の性格からしてこれまでにない斬新さを貫くところがらしさであったため、この問題は高大に適していた。
もともと高大はPOPのクリエイティブさに魅了されたのだ。この国を発展させるのは政治家ではなく、クリエイターという思いがあったからだ。しかし、検定ということから評価基準も大切なことは十分理解していた。
【予告】 引き続き、高大にとっては学科試験よりも、実技試験が難関であった。