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【小説】もし日本の総理大臣がPOP広告を描いたら〔第1章〕第1節-7)
〔第1章〕 高大は『繁盛店が必ずやっているPOP 最強のルール』と出会った
第1節―7)
店を閉じることを考えていた店主の話を聞いた高大は、息子である三代目の思いを聞くことにした。
「お父さんから聞きました。お店を閉じることを考えていると。三代目はどう思っているのですか?」
「正直、閉じたくありません。長年ご愛顧頂いているお得意さんのことを考えると続けたいです。でも現実を考えると今後もっとこの業界は厳しくなることは目に見えています。20年前に出店した大型店の影響は確かにありますけど、それ以上にコンビニや大手ミニスーパーの出店が始まるとお手上げです」
「この商店街で出店計画はあるのですか?」
「まだ聞いていませんが、このように空き店舗が多いですから出店しようと考える企業はあると思います。この辺は高齢化が進んでいますから大型店には行かなくなり、歩いて行ける近くのお店の需要が高くなります」
「それだったらご商売を続けられるのではないですか?」
「大型店より脅威なコンビニや大手ミニスーパーは必ず出店してきます」
高大は三代目と話をしていて3つの質問をどうしても聞いてみたくなった。
「お父さんにもお聞きしたのですが、3つ質問させてください。一つ目ですが、お店で代々受け継がれていることは何ですか?」
「当たり前ですけど、お客さまですね」
―――お父さんとは何か違う…
高大は少し期待でワクワクしていた。
「次に二つ目ですが、お店で習慣にしていることは何ですか?」
「10円玉ですが、輝いている新しい10円玉をお釣りのときに渡しています。毎日、近くの銀行窓口で古いのと交換しています」
「最後の三つ目です。ご商売を通じて未来に残したいことは何ですか?」
「生産者の思いです。トマトであってもそれぞれ品種も異なれば、品種が同じであっても土壌が異なります。生鮮一品一品の価値を伝えたいです。そして、価格の安さで選ぶ消費者ではなく、生産者さんの思いに対して購入してくれるお客さまを増やしたいと考えています。消費者だけではなく生産者も笑顔になる商売がしたいです。きっとこれは自分だけが得をする社会ではなく、皆で思いを分かち合う社会になるのではないでしょうか。話が取り留めもなくなりましたが(笑)」
三代目の思いを聞いて彼が他の仕事に転職してしまうのはとても惜しいと高大は思っていた。
「三代目には、脅威が脅威ではないものとできる資質があると感じます。そしてお父さんには20年前の大型店出店の脅威を乗り越えてきたという素晴らしい経験があります。この資質と経験は宝ですね。新たな脅威を乗り越えられるくらいの宝ですよ。金銭的な事情はわかりませんが、もう一度お父さんと話し合ってみたらどうですか?」
こう言い残した高大はお父さんにも挨拶をして、この後、公的団体の表敬を受けるために急ぎ官邸に戻った。相手を待たせてしまったようだ。時間を忘れるくらい食料品店で熱くなっていたようだ。
【予告】欧州各国を訪問し、1週間が経過した。
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