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【小説】もし日本の総理大臣がPOP広告を描いたら〔第2章〕8
〔第2章〕 高大は日本のPOPに取り組んだ。
第5節―1)
【あらすじ】 臨時国会の所信表明演説の中で、国民の皆さんに問いかけたのである。「この国のお客さまは誰か?」を明確に定義するために!
あの所信表明演説から1カ月がたった。
国民からの投稿を締め切り、集約を始めていた。
ある日、官邸に一通の封書が届いた。宛先は〝内閣総理大臣 山川 高大 様〟と明記されていたが、送り主が信頼できるものではなかったため、セキュリティの関係上、厳重に調べ、数日後、高大がその封書に入っている資料を手にした。
その資料を目にした高大はひと目で誰が書いたものであるかを理解した。それは〔所信表明演説 原稿〕と書かれており、文書は亡き父の直筆であった。
四百字詰め原稿用紙50枚にびっしりと書かれていた。
――― 送り主はいったい誰だろう?
高大はこうのように思いながら、原稿を読み始めた。
経済や社会保障、外交などをはじめ、すべて自分の政治信条を踏まえ、魂が湧きあがるような筆の運びに圧倒される思いであった。間違いなく本人自らの言葉であった。引き込まれるような感覚で読み進めていると高大は繰り返し記されているあるキーワードに氣づいた。
高大は定義らしきものを発見したことに全身が震える感覚であった。
これまで閣僚や議員、そして国民の皆さんに問いかけてきた、
〝この国のお客さまは誰か?〟
そして先を読み進めていくうちに、身に覚えのある一節があった。それは高大が小学生のときに書いた作文「父と僕」から引用されてあった。
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私は息子から
〝僕はお父さんに「なぜ勉強しないといけないの?」と聞いたことがありました。お父さんは「すこし難しいかもしれないが、人を感動させるためだよ。高大が大人になった時、何で人を感動させるか。その何かを見つけるために勉強するのさ」と言いました。よくわからなかったけど、ただ点数を取るために勉強するのではないことだけはわりました〟
この作文は私の宝物です。私が政治家としてこの国のために成し遂げなければならないミッションが定まったのです。
点数、われわれ政治家にはいろんな点数があります。例えば、投票数や支持率などもそうでしょう。しかし、それよりももっと大切なこと。次世代を担う子供たちに感動を与える大人でありたい!
日本は多くの問題を抱えています。ここにいる各議員や官僚、もちろん私一人では何もできません。
しかし、大人ひとりひとりの役割を全うすることでこの難局は乗り越えられるのです。
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高大は定義らしきことを発見した喜びと、何か分からない感情によって涙が溢れて止めようがなかった。
〝次世代の子供たちに感動を与える大人でありたい!〟
――― そうか、そうだったのか… 〝次世代を担う子供たち〟だったんだ。
国民全体がお客さまとなると違和感を抱かずにいられなかったが、国民の一部である〝子供たち〟となると高大も納得できた。
あとは国民の皆さんに訴えた反響を待つことになった。
数日後、その結果が副官房長官から伝達された。
多くの投稿が寄せられ、上位を集約すると〝国民、弱者、子供〟であった。この中でも圧倒的多数が次であった。
◎子供
――― さすが国民の皆さんだ!氣づかせてくれて有難う。
高大は感謝の念を示した。
テレビを使ったり、官邸のホームページに結果を掲載するなどで国民の皆さんに結果を報告した。
この国の〝お客様〟の定義が明確になったことで高大は早速行動に起こした。それは内閣改造であった。
【予告】 内閣改造に取り組んだ高大は、これまでの常識を覆すことばかりであった!