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【小説】もし日本の総理大臣がPOP広告を描いたら〔第4章〕3
〔第4章〕 「高大は自らPOP広告クリエイターになろうとした」
第2節―1)
【あらすじ】 高大は国民から期待され始めたことに感謝しながらも、おごることなく氣を引き締めることを新三役に告げて役員会を終了した。
「幹事長!ちょっとよいですか?」
先日、厚生労働大臣の兼行からPOP検定の情報を入手できたことを高大は告げたかったのだ。
伊藤が言ったとおり、POP検定は実存し毎年2回開催され、すでに27年目を迎えていることを伝えた。
「そうでしたか。私の勘違いではなくて良かったです」
伊藤は少し氣がかりな点があったので、間違った情報ではなかったことに安堵していた。
「兼行大臣には引き続き、POP検定だけではなく、POP広告についての情報収集をお願いしました。すごいこともわかったしね」
「すごいこと… 何ですか?それって」
「5万人を超えるらしいんだ。合格者だけでも!」
高大の驚きの大きさが声と比例していた。伊藤はそれを感じ取っていた。
そして次の高大の決意に伊藤は驚きを通り越し、しばらく反応できなかった。
「POP広告クリエイターになります!」
高大の目を見て本氣だと伊藤は確信した。
なぜなら、あのときと同じ目をしていたからだ。
今から20年ほど前。高大が衆議院議員選挙に立候補すると決意したときだ。政治の世界には全く関心がなく議員になるという選択肢は0%に近かったのだ。伊藤と高大は大学の超宇宙研究会に所属していた。高大はガンダム世代であり、そのうえ再放送の宇宙戦艦ヤマトに熱中していた。アニメを通じて昔から宇宙に夢をはせ、それに関する仕事に興味があったのだ。アニメに没頭していたわけではなく、野球や音楽などいろんなことに興味があった。野球は甲子園を目指せる東京都でも強豪校であった。3年間高校球児として活動していた。それと並行して高1の頃から宇宙にかかわる仕事がしたいと考え理系の大学進学を目指していた。高大は父のことが大好きであった。しかし、政治家は大嫌いであった。小学校の高学年ころから父に対する複雑な心境を抱えていた。その現実を逃避するかのようにアニメで描かれる壮大な宇宙に惹かれていった。そして大学進学後、超宇宙研究会に入会したのであった。この研究会で2年先輩の伊藤と出会ったのだ。伊藤は政治の世界を目指していた。政治研究会との掛け持ちであった。宇宙研究会は趣味の域を脱しないほどで、政治研究会がメインであった。そこにすでに政治家として有名であった山川大貴の息子である高大が入会してきた時は驚きを隠せなかった。何かの間違いでそれこそ政治研究会との掛け持ちとさえ思っていた。伊藤は高大に関心を抱き始めていた。それはひとりの男性としての感情ではなく、政治一家で育った人間への関心であった。伊藤にしてみれば、宇宙研究会がこのときから第2の政治研究会とも言えるくらい貴重な場となっていた。そして、高大が入会し初めての夏休み合宿で伊藤は衝撃を受けたのだ。
「宇宙飛行士になります!」
合宿中の研究発表の際に決意表明をした高大であった。
今日はこの時と同じ目をしていた。伊藤はその目に本氣を感じた瞬間であった。
【予告】 宇宙飛行士を目指していた高大であったが…