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【小説】もし日本の総理大臣がPOP広告を描いたら〔第4章〕5
〔第4章〕 「高大は自らPOP広告クリエイターになろうとした」
第2節―3)
【あらすじ】 幹事長の伊藤との会談はつづく…
「ひとつお聞きします。そこまでしてなぜPOP広告にこだわるのですか?」
伊藤はあの目を見たときからすでに本氣を感じていた。しかし、なぜPOP広告なのか?POP広告に何ができるのか?POP広告じゃなければならないのか?このことをしっかり受け止めたかったのだ。
「笑顔を創造することができるからです。自分が尊敬する政治家に教わったのです。その人は〝政治にしかできないことで笑顔を増やしたい〟と話してくれたのです。そして最近、この国から笑顔が減っていることを憂いていたのです」
「………」伊藤はハッと黙り込んでしまった。
続けて例の本に記されていることを高大は示した。
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POPのその先に笑顔があるか!
●笑顔を想像
現代は人間の気持ちが沈みがちです。雇用環境や景気悪化、その他不安な事態など暗い出来事が多いからです。その中で商売を継続し、繁盛させることは大変かもしれません。これまでの延長線上で商売を捉えていると、市場は狭まる一方です。商品を販売することが商売だと考えている店では、その傾向がより顕著です。
今は販売のその先にあるシーンを考える時代であり、そこに手を抜かない店が成長します。最も優先するべきなのは、お客さまの笑顔のために働くことです。何より笑顔は連鎖します。商売を通じて笑顔を提供することができれば、苦難な現代の商売であっても1人の笑顔がまた1人の笑顔を連れて来店してくれます。笑顔にさせてくれる店には人が集まります。
ここからが重要です。POPを制作する心構えとして、商品を購入してくれるお客さまの笑顔を想像して描きましょう。商売の原点に返って、お客さまの笑顔をイメージしながらPOPづくりを楽しんでください。
●笑顔を創造
売上も大切ですが、お客さまのストレスを取りのぞき、笑顔を提供することに商売の価値を見出す。ここに焦点をあてたいものです。
笑顔を創造することを知っているPOP広告クリエイターが活躍するシーンが増えると、その先に「日本の景気回復」が現実味を帯びてきます。(p190)
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伊藤は本に記されていることに共感した。特に〝最も優先するべきなのは、お客さまの笑顔のために働くことです。〟というところであった。まさに彼女の信条であった。
伊藤は高大の最強の理解者になろうと決心した。高大の目指す政治、そしてPOP広告を駆使することで伊藤自身が目指す政治も成し遂げられることを確信できたのだ。
「総理!POP検定の健闘をお祈りしております」
このメッセージは伊藤が納得したことの現れであった。
高大と伊藤は両手でガッチリ握手をした。
そして会議室をあとにしようとしたとき、伊藤が氣になることを口にした。
「厚労大臣の兼行には氣をつけてください!彼女はとても頭がきれます。味方にしておきたいタイプで決して敵にはしたくない。政治家というよりは官僚のような存在です。お願いしたことはテキパキとこなします。まったくミスもない。ただ彼女は本音を語らない。何より彼女の嫌いなものは…」
「嫌いなものは?」
「……… 〝笑顔〟です」
POPでつながることができる兼行とも伊藤同様、志を共にできると感じていたためとても意外であった。しかし、確かにこれまで兼行の〝笑顔〟を見たことはなかった。
「笑顔が嫌い…」
高大がポツリと口に出すと、伊藤は静かにうなずいた。
【予告】 来年の2月の『POP広告クリエイター技能審査試験』合格に向けて、高大は行動を起こした。