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【小説】もし日本の総理大臣がPOP広告を描いたら〔第4章〕6
〔第4章〕 「高大は自らPOP広告クリエイターになろうとした」
第3節―1)
【あらすじ】 来年の2月の『POP広告クリエイター技能審査試験』合格に向けて、高大は行動を起こした。
試験は毎年2月と8月に開催されていた。
来年の2月の『POP広告クリエイター技能審査試験』合格に向けて行動を起こした。公務に差し支えないよう試験主催の(一社)公開経営指導協会の通信教育を申込み、休日はこの勉強に費やした。
試験ガイドの概要には〝店舗およびサービス機関におけるPOP広告を販売促進ツール、コミュニケーションツールとして捉え、単なるレタリング技術のみではなく、幅広いPOP広告作成能力を審査するものとします〟と明記されていた。
学科試験は簡単そうであった。制限時間30分、正誤式で50問(1問2点)出題され60点以上の正解率で良いのだ。POP広告の種類や役割、作成の知識、使用する用具について問われるのだ。そして、POP広告を学ぶには販売促進全般の知識を必要とした。マスメディアであるテレビ・新聞・雑誌・ラジオや補完メディアであるチラシ・DMなど、そして近年はインターネットに関する出題も傾向として見られた。普段からマスメディアに取り上げられる立場にある高大にとって、POP検定対策で始めた勉強がメディアを理解できる機会となっていた(笑)
例えば、次のような普段使える問題もあった。
◎SNSはソーシャル・ネットワーキング・サービスの略で、インターネット上でユー
ザー同士がコミュニケーションできる会員制サービスです。
◎DMは特定対象者への訴求効果があり、チラシは広範囲の集客に有効なツールと言え
ます。
◎チラシを作成する場合には、商品を多く総合的に並べるタイプよりも、テーマや商品
を絞り込んだ方が、訴える力は強まります。
◎PRとは広告のように見なされますが、本来は一般消費者また社員などに対して、企
業方針や企業内容を示し、理解と協力を求める活動をいいます。
◎プル戦略とは、広告やセールスプロモーションにより直接消費者に働きかけて需要を
発生させ、自社商品ブランドのマーケットシェアの向上を実現し、購入させようとす
る戦略のことです。
POPらしい問題としては、
◎POP広告のPOPとは、Point of purchase(advertising)の頭文字をとったもので、購買時点(広告)という意味です。
◎POP広告は、見やすさ、読みやすさが大切なため、できるだけ紙面一杯に描くことが重要で、余白(ホワイトスペース)などを取る必要はありません。
◎POP広告のショーカードはもう一人の販売員として、商品説明や商品の推奨などの役割を果たします。
◎マーカーの角ペンを上手に使うコツの一つには、先端のエッジ(端)を効果的に利用
します。
◎明朝体は、楷書体の運筆法を基盤に、自然の筆跡を様式化してうまれた、横線が太く縦線が細い特徴を持つ書体です。
法律に関する問題としては、
◎日本では『表現の自由』が保障されているので、POP広告のコピーも虚偽でなければあいまいな表現なども、自由に表現することができます。
◎メーカーの商品政策ばかりでなく、小売店にあってもPL法を考慮したPOP広告政策は大切です。
◎日本ではJAS法により、一般消費者向けに販売される全ての食品について品質表示が義務づけられており、特に生鮮食品については原産地の表示が必要です。
◎景品表示法とは、独占禁止法の特例法で、競争を公正なものにし、不当表示や過大な
景品類の提供による不当な顧客誘引を禁じている法律で、消費者の利益を保護するも
のです。
◎著作権とは著作者が著作物に対して持つ権利で、文章、曲、歌詞、絵画、写真などすべて著作権の対象です。POP広告作成の際にも、著作権を考慮することが大切です。
店舗関連の問題としては、
◎ゴールデンスペースとは、人間の視点の高さとの関係で最も見やすく、手の届く範囲で最もさわりやすい高さの空間をいいます。
◎ダウンライトとは、下方向から上に向けて照らすもので、ある部分をクローズアップさせる時に効果的です。
◎情報バリアフリーの視点から考えると、文字の大きさや色彩に配慮したPOP広告も必要となってきます。
◎色の3原色は、赤紫(マゼンダ)・緑みの青(シアン)・黒(ブラック)です。
◎コンドラの両端のゴンドラエンドには「重点商品」を陳列するより、「定番商品」を陳列したほうが売上げが伸びます。
こんな出題も過去にはあった。
◎「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」のドラッカーとは、経営学者の第一人者として高名なピーター・ドラッカーのことである。
(解答は巻末に掲載)
近年は、販売促進の範疇も拡大しユニバーサルサービスの視点も取り入れた出題となっていた。意外と幅広いことを知ることができ学習意欲が増大していた。
――― POP広告クリエイターは、単にPOPが描ける人たちではないのかぁ…。ほんといろんなことを学んでいるんだ。それが5万人以上もこの国に存在している。みんなに活躍してもらわない手はない!
勉強しながらあらためて感じていた。
【予告】 学科試験よりも、実技試験が難関であった。